90分の講義を、本当に復習に使えるノートに変える
講義を録音する学生は、4週目までに同じことに気づきます。録音は溜まっていくのに、誰も聴き返さない。90分のファイルは、持っていない90分です。聞き逃した定義ひとつを探して早送りするより、友人に聞いたほうが速い。
録音が役に立つのは、読めて、検索できて、質問できる形になったときだけです。それにかかるのは1講義あたり5分ほど。しかもその5分に「聴く」時間は含まれません。
文字起こしが使える録音の取り方
この先のすべては、音声が聞き取れるかどうかにかかっています。そして講堂は敵地です。話し手は動き、空調はうなり、後ろの席の人が最悪のタイミングで包装を開けます。
機材より効くことが3つあります。
- スマホはカバンの中ではなく机の上に。 布は、音声が乗っている中音域をちょうど覆い隠します。マイク側を前に向けて机に平置きしたスマホは、ポケットの中の高級レコーダーに勝ちます。
- 必要と感じるより前の席に座る。 声の大きさは距離とともに減衰しますが、室内のノイズは減りません。1列前に行くたびに比率が改善します。
- 停止・再開を繰り返さない。 1講義1ファイルのほうが、「新規録音 7」という名前の断片9個よりはるかに扱いやすい。
会場にPAがあって話し手がマイクを使っているなら、席はどこでも構いません。音源はスピーカーです。
一度文字起こししたら、音声には触れない
録音をアップロードして文字起こしします。ここから先、音声は作業対象ではなくアーカイブです。以降の作業はすべてテキスト上で行います。検索でき、引用でき、90分の講義なら1万2千語ほどの分量です。
学んでいる言語だが流暢ではない、という講義の場合の実務的な注意:話されている言語で文字起こししてください。あとから文字起こしを翻訳するのは簡単ですが、翻訳済みの音声を文字起こしするのは簡単ではありません。
章立てが目次の役割をする
1万2千語の壁は、音声よりわずかに親切なだけです。使えるようにするのは構造で、講義にはもともと構造があります。話し手が順番にトピックを進めたからです。
文字起こしをチャプター生成にかけると、そのトピックの切り替わりに沿ってタイムスタンプ付きのセクションが得られます。定義、例題、試験についての脱線、最後のまとめ。すぐに2つのことが可能になります。講義全体の形が1画面で見えること。そして板書の記号が言葉になっていなかったとき、47:20の音声に直接戻れることです。
録音に自分の疑問をぶつける
作業の採算を変えるのは、読み返すのではなく音声に質問することです。講義から欲しいものは要約であることはまれで、たいていは具体的な穴の答えです。
- 「ここで話された弾力性の定義を、話し手の言葉のまま教えて」
- 「課題について述べられたことを全部:締切、形式、採点対象」
- 「これは教科書4章の記述とどこで矛盾する?」
- 「後半を本当に理解できているか試す質問を5つ作って」
最後のものが最も価値が高く、学生が最後に思いつく使い方です。教材から問いを作って記憶だけで答えるのは検索練習(retrieval practice)——学習法の中で最も証拠が厚い手法です。講義がテキストになっていれば、準備は30秒で済みます。
何を、どんな形で残すか
5分の作業のあと、1講義につき手元に残るべきものは、文字起こし・章立て・自分で書いた答えの3つです。復習するのはこれです。音声は、「あの言い回しを正確に聞き直したい」という学期に2〜3回の場面のために置いておきます。
はっきり書いておきたい注意がひとつ。録音から生成されたノートは、理解したような感触を与えますが、理解ではありません。ファイルが処理されたことは、頭の中に何も入れてくれません。質問を使い、資料を閉じて答え、文字起こしと突き合わせてください。文字起こしの仕事はこのループを速くすることであって、代わりを務めることではありません。
他人を録音することについて
規則は大学ごと、国ごとに異なります。多くの大学は個人の学習目的の録音を認め、共有や公開を禁じています。事前に教員の許可を求めるところもあり、同級生が発言するゼミは、300人相手の講義より厳しく扱われます。学期の初めに一度、自分の所属機関の規程を確認し、はっきりしなければ聞いてください。メール1通のコストで、学習の助けと懲戒事案の分かれ目になります。